股関節手術に対する
基本的な考え方
① 股関節痛の場所と股関節疾患
股関節が痛むといってもかなり広い範囲のことを示しており、痛みを分析せずにX線写真の変化だけで手術を考えることは、正しい判断をしているとは言えません。
股関節痛を訴える部位にはいろいろな場所があります。
X線写真で股関節の変形や関節の隙間が狭い(軟骨の状態を示していますが)といった所見を示していても、痛みの部位がどこにあるか、X線上の診断と臨床上の診断とが一致しているかについて、常に注意をして診察することが大切です。
股関節の臼蓋という体重を受ける骨盤の屋根の部分が足りないことを基盤として発症する変形性股関節症や臼蓋形成不全症といわれる状態での痛みは、主に股関節の前方や大腿部の前面であるのが一般的です。
たとえX線写真で股関節の隙間が狭くなっていても、前方に痛みがなければ他の原因が存在することも考えられます。
また手術をすぐに受ける必要がないことも考えられます。
股関節の後方特に臀部(お尻の部分)の痛みの原因は複雑です。
股関節の中心部に向かって異常なストレスの生じる場合は、股関節の後ろ側に痛みが生じることもありますが、股関節の後方が痛いと訴える患者さまは、他に腰椎やその他の疾患がないかをまず注意します。
股関節の外側の痛みの場合には、大腿骨に大転子という外に張っている骨がありますが、その部分と体を外からささえる靭帯とがこすれて、滑液包炎という炎症をおこして痛みを生じることもあります。
また神経痛性大腿痛という疾患があって股関節近くで神経が締め付けられて大腿外側の痛みが生じていることがあります。
股関節内方が痛いときには、明らかなX線の変化がなくても恥骨の疲労骨折ということもあり、長内転筋という筋肉の腱炎の場合もあります。
私たちのクリニックには、X線写真で軽い股関節の臼蓋形成不全があって、すぐ手術をしなさいと言われて、悩んで相談しにくる患者さまが時々いらっしゃいます。
痛みの部位が前方にあるかどうかをチェックし、そうでなければ他の原因がないかをじっくり検討するようにし、手術を急ぐ必要のないことをお話しています。
股関節が痛むといってもかなり広い範囲のことを示しており、痛みを分析せずにX線写真の変化だけで手術を考えることは、正しい判断をしているとは言えません。
股関節痛を訴える部位にはいろいろな場所があります。
X線写真で股関節の変形や関節の隙間が狭い(軟骨の状態を示していますが)といった所見を示していても、痛みの部位がどこにあるか、X線上の診断と臨床上の診断とが一致しているかについて、常に注意をして診察することが大切です。
股関節の臼蓋という体重を受ける骨盤の屋根の部分が足りないことを基盤として発症する変形性股関節症や臼蓋形成不全症といわれる状態での痛みは、主に股関節の前方や大腿部の前面であるのが一般的です。
たとえX線写真で股関節の隙間が狭くなっていても、前方に痛みがなければ他の原因が存在することも考えられます。
また手術をすぐに受ける必要がないことも考えられます。
股関節の後方特に臀部(お尻の部分)の痛みの原因は複雑です。
股関節の中心部に向かって異常なストレスの生じる場合は、股関節の後ろ側に痛みが生じることもありますが、股関節の後方が痛いと訴える患者さまは、他に腰椎やその他の疾患がないかをまず注意します。
股関節の外側の痛みの場合には、大腿骨に大転子という外に張っている骨がありますが、その部分と体を外からささえる靭帯とがこすれて、滑液包炎という炎症をおこして痛みを生じることもあります。
また神経痛性大腿痛という疾患があって股関節近くで神経が締め付けられて大腿外側の痛みが生じていることがあります。
股関節内方が痛いときには、明らかなX線の変化がなくても恥骨の疲労骨折ということもあり、長内転筋という筋肉の腱炎の場合もあります。
私たちのクリニックには、X線写真で軽い股関節の臼蓋形成不全があって、すぐ手術をしなさいと言われて、悩んで相談しにくる患者さまが時々いらっしゃいます。
痛みの部位が前方にあるかどうかをチェックし、そうでなければ他の原因がないかをじっくり検討するようにし、手術を急ぐ必要のないことをお話しています。
② 股関節症を悪化しやすいタイプとその予防
股関節には痛みを生じやすいタイプ、また進行や悪化が早いタイプがあります。
何といっても臼蓋の形成不全や亜脱臼の強い人は放置していると早く悪化することあります。
大腿骨頚部前捻角といって頚部の前方への捻れが大きい場合や頚体角が大きい場合も進行は早いと思います。
若くして関節症が進行した場合も、関節内の炎症を強く起こします。まれには急速に股関節が破壊していくタイプもあるので注意を要します。
股関節症を悪化させないいためには、2つの矛盾することを上手に取り組まなくてはなりません。
ひとつは、活動性に気をつけ、長時間の歩行や立ちっぱなし、動きすぎず、重いものを持って歩かないなどの注意が必要です。しかしただじっとしていれば良いというものではなく、やはり股関節を支持する筋力も必要です。
筋力を落とせば、股関節の安定性を失い、体重をかけることで股関節の外側へ多くのストレスを生じて関節症を悪化させてしまいます。
体を横にしての筋力アップや浮力を利用できるプール内での歩行や運動は最も効果的なことです。
そして股関節を基本的には冷やさないことも大切な要素です。
入浴、温泉などは慢性の関節炎の炎症を解消するように作用すると考えられます。
ただ無理をしすぎて炎症が強く起こった場合には、一時的にはクーリングをして関節炎の急性期を対処することも必要と考えられています。
股関節には痛みを生じやすいタイプ、また進行や悪化が早いタイプがあります。
何といっても臼蓋の形成不全や亜脱臼の強い人は放置していると早く悪化することあります。
大腿骨頚部前捻角といって頚部の前方への捻れが大きい場合や頚体角が大きい場合も進行は早いと思います。
若くして関節症が進行した場合も、関節内の炎症を強く起こします。まれには急速に股関節が破壊していくタイプもあるので注意を要します。
股関節症を悪化させないいためには、2つの矛盾することを上手に取り組まなくてはなりません。
ひとつは、活動性に気をつけ、長時間の歩行や立ちっぱなし、動きすぎず、重いものを持って歩かないなどの注意が必要です。しかしただじっとしていれば良いというものではなく、やはり股関節を支持する筋力も必要です。
筋力を落とせば、股関節の安定性を失い、体重をかけることで股関節の外側へ多くのストレスを生じて関節症を悪化させてしまいます。
体を横にしての筋力アップや浮力を利用できるプール内での歩行や運動は最も効果的なことです。
そして股関節を基本的には冷やさないことも大切な要素です。
入浴、温泉などは慢性の関節炎の炎症を解消するように作用すると考えられます。
ただ無理をしすぎて炎症が強く起こった場合には、一時的にはクーリングをして関節炎の急性期を対処することも必要と考えられています。
③ 股関節症が悪化するとき
関節が悪くなる時には、患者さまは必ず「痛み」を感じます。
関節周囲に過剰なストレスは痛みをもたらし、関節内の軟骨の摩耗粉は滑膜という組織を刺激して滑膜炎という炎症を起こします。
これが安静時や夜間にも痛みを感じる理由と考えられています。
このような状態を続けていると股関節に多量の関節液が溜まったままとなって関節軟骨に栄養が十分いきわたらなくなり、関節症を悪化させると思われます。
患者さまはクリニックに来られて、「先生、すぐに痛みを取ってください。
先生は股関節を専門にしているのだから、注射でもしてすぐに痛みをとることができるでしょう。」と良くおっしゃいます。
しかし私たちはいつも患者さまに「痛みを感じることは貴重なことで、それを大事にしてください。人は痛みを感じるから、関節が壊れないように気をつけることができるのですよ。」とお話しすることにしています。
ペインクリニックや鍼灸に安易に行って痛みをとることだけ願っていると、知らず知らずに関節がどんどん悪化していくことがあるので、本当に注意が必要です。
痛みというメッセージを是非大事にして、関節を無意味に破壊していかないように注意が必要です。
「関節の痛み」は神様が創った自分の身を防御するありがたい情報であることを覚えておいてください。
④股関節外科に対する私たちの考え
人工関節の歴史も40年を越えるようになり、人工股関節が長期に良好な機能を発揮することがわかってきました。
一方で、過去には人工関節は大学病院などの公的な大病院で行われるのが一般的でしたが、最近では民間の病院でも人工関節手術を普通に行うといったことが当たり前になってきました。
手術件数が多ければ良い病院とマスコミや雑誌でもてはやされる風潮は決して良くありません。
股関節の人工関節や骨切り術が民間病院でも多く行われるようになったために、手術の適応が甘くなっています。
日常生活の工夫を指導することなく保存的に治療することもせず、手術の適応を慎重に吟味することなく、安易に手術を促す風潮にあることは嘆かわしいことです。
股関節の骨切り術は、術者の技量が手術成績に大きく関与するのですが、人工股関節手術では、高度な技術を持たない医師の手術でも術後5年や10年ではあまり結果に大きな違いは出ません。しかしながら10年や15年を経過したら必ず成績に違いが出ると考えます。
現在の人工股関節の一番の問題点は、手術の皮切の小ささと入院日数の短さです。
手術の皮切を小さくすることによって、人工関節のカップを正確に設置することを怠り、必要な臼蓋部の骨移植を省略している症例をたくさん見ます。
また入院日数をかなり短くして手術後に短期間で退院させることを薦める風潮にありますが、体の奥深くまで操作する股関節手術では、少なくとも3週間は無理をせずにリハビリしていくことが大切と考えます。
あまりに早くから股関節に無理をかけることによって、股関節周囲の軟部組織の治りや修復の遅れ、時には手術後の脱臼の危険をもたらすからです。
股関節症が悪化すると、夜間痛・安静時痛が持続し、日常の活動性が制限され、跛行の増強、脚長差の増加、股関節可動域の悪化が認められます。
そういう場合には手術を受けられたら良いと思います。
医師の指導で疼痛が改善し、日常生活が適応できれば、手術を望まなくなることもあると思います。
医者と相互に理解を深めて、良い関係を維持することが大切と考えます。
人工関節の歴史も40年を越えるようになり、人工股関節が長期に良好な機能を発揮することがわかってきました。
一方で、過去には人工関節は大学病院などの公的な大病院で行われるのが一般的でしたが、最近では民間の病院でも人工関節手術を普通に行うといったことが当たり前になってきました。
手術件数が多ければ良い病院とマスコミや雑誌でもてはやされる風潮は決して良くありません。
股関節の人工関節や骨切り術が民間病院でも多く行われるようになったために、手術の適応が甘くなっています。
日常生活の工夫を指導することなく保存的に治療することもせず、手術の適応を慎重に吟味することなく、安易に手術を促す風潮にあることは嘆かわしいことです。
股関節の骨切り術は、術者の技量が手術成績に大きく関与するのですが、人工股関節手術では、高度な技術を持たない医師の手術でも術後5年や10年ではあまり結果に大きな違いは出ません。しかしながら10年や15年を経過したら必ず成績に違いが出ると考えます。
現在の人工股関節の一番の問題点は、手術の皮切の小ささと入院日数の短さです。
手術の皮切を小さくすることによって、人工関節のカップを正確に設置することを怠り、必要な臼蓋部の骨移植を省略している症例をたくさん見ます。
また入院日数をかなり短くして手術後に短期間で退院させることを薦める風潮にありますが、体の奥深くまで操作する股関節手術では、少なくとも3週間は無理をせずにリハビリしていくことが大切と考えます。
あまりに早くから股関節に無理をかけることによって、股関節周囲の軟部組織の治りや修復の遅れ、時には手術後の脱臼の危険をもたらすからです。
股関節症が悪化すると、夜間痛・安静時痛が持続し、日常の活動性が制限され、跛行の増強、脚長差の増加、股関節可動域の悪化が認められます。
そういう場合には手術を受けられたら良いと思います。
医師の指導で疼痛が改善し、日常生活が適応できれば、手術を望まなくなることもあると思います。
医者と相互に理解を深めて、良い関係を維持することが大切と考えます。